「決算書は黒字なのに、通帳の残高が増えない」「利益が出ているはずなのに、税金を払うお金がない」。経営者の方から、よくこんな相談を受けます。これは経理のミスではなく、利益とお金の流れは別物だから起きることです。この記事では、そのズレが生まれる理由と、対処の考え方を説明します。
結論:利益は「請求した・使った時点」、お金は「実際に入金・出金した時点」で数えるため、黒字でもお金が残らないことがあります。売掛金・在庫・借入の返済・設備投資・税金などがズレの主な原因で、資金繰り表と納税用の口座で「先に分かる」状態をつくるのが対処の基本です。
利益とお金は、数え方が違う
利益は「売上 − 経費」で計算します。ここでの売上は、請求した時点で計上され、経費も使った時点で計上されます。お金が実際に動いたかどうかは関係ありません。
一方、お金の流れは「入金 − 出金」です。こちらは、実際に通帳を動いた金額だけを数えます。
この「数え方の違い」が、黒字なのにお金がない、という状況を生みます。
ズレが生まれる6つの原因
1. 請求したけど、まだ入金されていない(売掛金)
月末に請求書を出すと、その時点で売上になります。でも入金は翌月末、あるいは翌々月ということも珍しくありません。売上が伸びている時期ほど、この「まだ入っていないお金」が大きくなり、利益は出ているのに手元は苦しい、という状態になりやすいです。
2. 仕入れたけど、まだ売れていない(在庫)
商品を仕入れたときに払ったお金は、売れるまでは経費になりません。倉庫に在庫があるということは、そこにお金が姿を変えて眠っている、ということです。
3. 借入金の返済
借りたお金を返しても、元本の返済は経費になりません(利息だけが経費です)。毎月10万円返済していれば、年間120万円が「利益には影響しないのに、お金は減る」支出になります。融資を受けている方が黒字倒産に近づく、いちばん大きな原因です。
4. 設備や車の購入(減価償却)
300万円の車を買っても、その年に300万円が経費になるわけではありません。数年に分けて少しずつ経費にします(減価償却)。お金は買った年に全部出ていくのに、経費は分割される。ここでもズレが生まれます。
5. 税金と社会保険料は、あとから来る
所得税・住民税・消費税・法人税は、利益が出た「あと」に請求が来ます。特に初めて黒字になった年は、翌年に所得税、住民税、そして予定納税(前年の税額をもとにした前払い)が重なり、「こんなに払うの?」となりがちです。消費税も、売上と一緒に預かっているお金を使ってしまうと、納税のときに足りなくなります。
6. 生活費(個人事業主の場合)
個人事業主の場合、自分の生活費は経費になりません。利益から生活費を引いた残りが、本当に事業に残るお金です。「利益500万円」は「自由に使える500万円」ではない、ということです。
対処の考え方:お金の流れを「見える化」する
資金繰り表をつくる
「今月いくら入って、いくら出て、月末にいくら残るか」を、3か月〜6か月先まで書き出した表です。難しいものではなく、通帳の予定を先に書いておく、というイメージです。これがあると、「来月の納税で足りなくなる」が事前に分かり、手を打つ時間ができます。
納税用のお金を、先に取り分ける
入金があったら、その一定割合を納税用の別口座に移す習慣をつけると、納税のときに慌てなくなります。割合は事業の内容によりますが、消費税を預かっている場合はその分も含めて考えます。
入金を早く、支払いを遅く
請求のタイミングを早める、入金サイトの短い条件で契約する、前金や着手金をもらう。こうした工夫で、売掛金の「待ち時間」を短くできます。
借入は「返せる金額」から逆算する
毎月の返済額は、利益からではなく、「利益 − 税金 − 生活費(または役員報酬)」で残るお金から払えるかどうかで考えます。この計算をせずに借りると、黒字なのに返済が苦しい、という状態になります。
まとめ
- 利益は「請求・使用の時点」、お金は「入金・出金の時点」で数える。だからズレる
- 売掛金、在庫、借入返済、設備投資、税金、生活費が主なズレの原因
- 資金繰り表と納税用口座で、「先に分かる」状態をつくる
当事務所では、お金の流れを図にして「なぜ残らないのか」を一緒に確認し、資金繰り表をつくるところから伴走するキャッシュフローコーチのサービスを行っています。「数字は苦手」という方こそ、一度お話ししてみてください。初回相談は60分まで無料です。
※この記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。税金の計算や納付時期は、事業の形態や規模によって異なります。具体的な判断はご相談ください。
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