個人事業主として順調に売上が伸びてくると、「そろそろ法人にしたほうがいいのかな」と考える瞬間が来ます。ただ、法人化は税金だけで決められる話ではありません。この記事では、法人化を検討する目安と、見落としがちなコストを整理します。
結論:法人化を検討する目安は、利益(所得)が500万〜1,000万円くらいになったときです。ただし、有利になるかどうかはケースバイケースです。社会保険料の負担増や設立費用などのコストも含めて、個人のままの場合と数字で比べて判断します。
目安1:利益(所得)が500万〜1,000万円くらいになってきたら
もっともよく使われる目安が、年間の利益(売上から経費を引いた所得)です。
個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」です。住民税と合わせると、所得900万円を超える部分には43%(所得税33%+住民税10%)がかかります。一方、法人の税金(法人税・法人住民税・法人事業税)は、中小企業の場合、利益800万円以下の部分でおおむね25%前後、それを超えても35%前後で頭打ちです。
さらに法人にすると、自分への給料(役員報酬)を経費にでき、その給料には「給与所得控除」という自動的な控除がつきます。こうした仕組みが重なって、利益が500万〜1,000万円くらいになってくると、法人化を検討する価値が出てきます。
幅があるのは、どこで有利になるかが本当にケースバイケースだからです。次に説明する社会保険料、扶養家族の有無、役員報酬をいくらに設定するか、事業の経費構造などによって、500万円で法人が有利になる人もいれば、1,000万円でも個人のままのほうがよい人もいます。「いくらを超えたら」と一律には言えないので、必ず自分の数字で試算することをおすすめします。
目安2:社会保険料の負担をどう見るか
法人化で見落とされやすいのが社会保険です。法人は、代表者ひとりでも健康保険・厚生年金への加入が義務になります。保険料は会社と本人で半分ずつ負担しますが、ひとり会社では結局どちらも自分のお金です。
個人事業主のときの国民健康保険・国民年金と比べて、負担が増えることも減ることもあります。将来受け取る年金が増えるというメリットもあるので、「税金は減ったけど社会保険で相殺された」とならないよう、あわせて計算することが大切です。
目安3:消費税の免税期間は、以前ほどの決め手ではなくなった
以前は「法人を設立すると最大2年間、消費税が免税になる」ことが法人化の大きなメリットとされていました。
しかし、2023年10月にインボイス制度が始まってからは、取引先との関係でインボイス発行事業者(=消費税の課税事業者)になることを選ぶケースが増えました。課税事業者になると免税のメリットは受けられないため、消費税を理由に法人化する意味は薄くなっています。お客様が一般消費者中心の事業であれば、免税のメリットが残る場合もあるので、業種によって判断が分かれるところです。
目安4:取引先・融資・採用の場面で必要になったら
税金以外の理由で法人化が必要になることもあります。
- 「法人としか取引しない」という会社と契約したい
- 金融機関からの融資を受けやすくしたい
- 従業員を雇いたい(求人の応募が集まりやすい)
- 事業を家族や第三者に引き継ぐ可能性がある
こうした事情があるなら、利益が目安に届いていなくても、法人化を前向きに検討する価値があります。
法人化のコストも知っておく
メリットだけでなく、法人にすると確実にかかる費用があります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 設立費用 | 株式会社で30万円くらい、合同会社で15万円くらい(登録免許税・定款費用・専門家報酬などを含めた目安) |
| 法人住民税の均等割 | 赤字でも年7万円程度 |
| 税理士費用 | 個人事業のときより高くなるのが一般的 |
| 社会保険料 | 会社負担分が発生 |
| 事務の手間 | 決算・申告が複雑になり、自分だけで完結しにくい |
これらを差し引いても手元に残るお金が増えるかどうかが、判断のポイントになります。
法人化のタイミングは「区切りのよい時期」に
法人化すると決めたら、実際の設立日は事業の区切りに合わせるのがおすすめです。年の途中で法人化すると、その年は個人事業の確定申告と法人の決算の両方が必要になり、手間が増えます。多くの場合、1月や、繁忙期を避けた時期に設立して、個人事業の廃業届と法人の設立届をまとめて出す流れになります。
まとめ
- 利益500万〜1,000万円くらいが検討のライン。どこで有利になるかはケースバイケース
- 社会保険料の負担増を必ずセットで計算する
- 消費税の免税は、インボイス制度後は決め手になりにくい
- 取引先・融資・採用の事情があれば、利益が少なくても検討の価値あり
- 設立費用や均等割など、確実にかかるコストも織り込む
参考資料
(いずれも2026年9月26日確認)
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※この記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。税率や制度は改正されることがあります。個別の事情によって有利・不利は変わりますので、具体的な判断はご相談ください。
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